シルヴァーが死んだ日

 

あくる日の夕方である。いつものようにデスクに向かい、紫の某ロボットのVCを聞きながら、シルヴァーサーバーに入る。何気ないこの光景だが、この日だけは何か違った。VCから流れる不穏な言葉、何やらつぶやいているようだった。

 

このフィルムは、しるばぁー国と諸外国との間で有事の事態が発生し

いかなる交渉ラグ回避を行おうとも、情勢悪化を回避できず

なおかつ、平和的終結が著しく見込めない場合におけるとき

政府から発令される「最重篤的ラグ事態宣言」布告による、

全しるばぁー国民の最後の行動を

示唆(しさ)するものであります。


「最重篤的ラグ事態宣言(じゅうとくてきらぐじたいせんげん)」

が布告された場合


「最重篤的ラグ事態宣言」が布告された時

自治体により、速やかに

きつね酸化系の猛毒が

しるばぁー国内全世帯に送付される

取り決めになっています


きつね酸化系猛毒剤

これは、非常に強力な麻薬です

わずか10ccの服用で

0.mm秒以内で昏睡状態に陥り

1分で心臓がとまり

一切の身体的苦痛(しんたいてきくつう)を伴うことなく

極めて穏やかに死に至ります


猛毒役の配備について

わが国にはこのような有事の際に備えて

自治体単位で「猛毒薬」の配備がされており

布告の際は各世帯への送付が可能になっています。


社団法人「しるばぁー国尊厳維持局」は

令和3年3月に発足した

”しるばぁーの尊厳を尊重する”ことを念頭に


「想像し難い重篤な危機的ラグ状況」に陥った場合


あなたの人生、誇り、魂、そして

”しるばぁー人”として生きてきた事を留意(りゅうい)し

いかなる勢力にも屈(くっ)することなく―


その時が訪れる前に.....


しるばぁー国民がともに行動を起こせるよう

設立された団体であります。

 

どこかで聞いたことがあるような定型文、その時思いだしたのが「日本国尊厳爺局」であった。ニコニコ界隈を中心に瞬く間に拡散され、ネタであるにもかかわらず本気で信じてしまうほどの完成度の動画である。

 

それがなぜここで流れているのだろうか。不審に思いつつもサーバーに入る。サーバーに入れば落ち着くだろう、そう思っていた矢先、入った瞬間に私を待ち受けていたのは、見たこともないような”ラグ”であった。ラグい、ラグすぎる。

 

まともに建築できないほどのラグに私は疲れ果てていた。その時だった。静寂の家にピーンポーンという音が。

「お届け物を持ってまいりましたー」

外には宅急便らしき人が立っていた。

「最近荷物頼んだっけなぁ」

そう思いながらもドアを開ける

手渡されたのは一つの小包だった。しかし何か不気味だ。

恐る恐る中を開けてみると

 

きつね酸化系猛毒剤 10CC入り

 

そこからのことは覚えていない。時計を見るともう4時間もたっている。眠気が体を襲う。今にでも寝てしまいそうだ。しかし恐る恐る紫の某ロボットを開いてみる。

 

PARZIVAL40

@参加済 ワールドをリセットし、第四ワールドに移行します

 

顔から血の気が引いていくのを感じた。

その後ベットで飛び起きていた。時計を見ると朝の7時だ。起きなければ。

ニュースを見ると、宅配便を装い睡眠薬を届ける犯罪グループの一員が逮捕されていた。すぐに感づいた。昨日の宅配員だと。

 

安心した面持ちで徐に紫の某ロボットを開く。

 

「あれは睡眠薬の副作用だったんだ、ワールドリセットなんて夢だったんだろう...」

 

そこに書いてあったのは、残酷な文章だった。

 

PARZIVAL40

@参加済 ワールドをリセットし、第四ワールドに移行します

 

その後、彼の姿を見た者はいない。

しかし、「ずいしょく」という一人の勇敢な青年によって、この話は後世まで語りづかれているという。